ウサギ(Ocyctolagus cuniculus)の皮膚腫瘍は、粘液腫症、線維腫、線維肉腫、乳頭腫、基底細胞腫、扁平上皮癌、皮脂腺癌およびリンパ腫が論文報告されていますが、悪性黒色腫は10例と非常に稀な腫瘍とされています。
ウサギのメラノーマの報告は論文報告されているものは世界で10例しかないが、リンパ管侵襲7例、遠隔転移2例、安楽殺を含む関連死が5例で報告されており、悪性度の高い腫瘍と考えられています。当院での皮膚にできた悪性黒色腫2症例は、いずれも転移により腫瘍死しており、既報と同様に悪性度の高い腫瘍でした。メラノーマは獣医領域ではイヌでの発生が多く、その発生は口腔内が最も多く次いで皮膚におこります。発生部位がその後の予後に重要であり、口腔内の腫瘍は、悪性度が高く頻繁にリンパ節や肺に転移をおこし、皮膚では四肢、口唇に発生した腫瘍の悪性度が高いとされています。ネコでは、眼球で最も多く発生し、転移を頻繁に起こすことが報告されています。ウサギでの発生部位は、耳介、眼瞼、頭部、四肢、鼠径、陰嚢であり、頭部と鼠径部に発生した腫瘍での転移、腫瘍死が報告されています。今回当院で報告いただいたウサギにおいて陰嚢および眼瞼の皮膚に発生し、いずれも転移ならびに腫瘍死に至っており、ウサギにおける皮膚にできるメラノーマは非常に悪性度が高い可能性があります。
ただし、黒いからすべて悪性黒色腫ではありませんし黒くないから悪性黒色腫ではないとはいえません。ご注意ください。
犬や猫の腫瘍とウサギの腫瘍は同じ診断名の病気でも発生場所が違う事や挙動が違うことがよくありますので動物別に腫瘍について精通する必要があります。
Aは陰嚢皮膚、Bは眼瞼皮膚 Cは転移した肺
ついつい得意分野で力が入ってしまいましたがウサギの腫瘍でお困りなことがあればご相談ください。